6月最初の月曜、新幹線で関西から東京へ移動中。
名古屋到着時に乗ってくる人をぼんやり眺めながら、車両に乗り込むときのいそいそとした動きが「大阪(せっかち)>名古屋>>>京都(はんなり)」だと今更ながら気付いた。
「同じ日本でも1時間移動するだけで、これだけ行動様式が異なるんだなあ」と当たり前のことを感じた。
人々の趣味嗜好が地域や時代によって多様化すると、自分にカスタマイズしたサービス・製品を求めるようになる。
自分にフィットする服を選び、自分が食べたいモノを食べ、自分が住みたい家に住むのは今も昔も変わっていない。さらに自分の嗜好がデータ化されている現代では、見たい(であろう)ニュースや欲しい(であろう)製品・サービスをストレスなく提供されている。
この動きが加速すると、自分が関わる川上の素材産業に具体的にどのような影響があるだろうかと考えてみた。
●日本とインドで求められるプラスチックは同じ?
一個人で考えるとミクロになりすぎるので、まずは最大上位概念の国別で考えてみる。製品レベルで考えれば各メーカーは既にそこに住む人の特性を理解したうえで、製品の特徴をカスタマイズして開発、販売している。
例えばインドでのエアコンはスペースの問題?か室外機無しの窓はめ込み型タイプが存在するし、お手伝いさんを雇っている家では盗難に合わないよう冷蔵庫に鍵をかけられる仕様になっているし、イスラム教が主流の国ではお祈りの時間を知らせてくれるのがデフォルトになっている家電もある。
これらの開発のために必要なアプローチが「顧客を観察しよう」「受けるか判らないから速攻プロトタイプを作って検証しよう」という動きであり、これがデザインシンキングの考え方とマッチして各社が盛んに導入しているのであろう。
さて、ではその製品を構成するプラスチックや各パーツは国によってカスタマイズしているのだろうか?私の認識ではこれまでそのような例は殆どない。実はインド人が求めるエアコンの外装と、日本人が求めるそれは異なるのだろうか?
そこでふと思ったのは、今までその各地でカスタマイズしてきた製品はその「人」に合わせていたというより、その人がいる「環境」に合わせきた、のではないだろうか?という点。
●なぜ「人」ではなく「環境」に合わせてきたのか?
「環境に合わせてきた」という前提で話を進めると、その理由として①一人一人に対応していると量が出ずに固定比率が上がり原価が上がってしまうというコストの点と、②その当時「定量化」できたのが環境だけだったからではないかと。例えば
「40度を超える日が〇〇日ある」→「耐熱性のプラスチックが必要」
「ホコリっぽい」→「各パーツを隙間なく詰める製品設計が必要」
「平均収入が〇〇ドル」→「製品原価は△△ドルまで」
「平均的な家の大きさは●●m2」→「ボリュームゾーンの冷蔵庫の大きさは■■m3」
これらはある程度定量化できるため、製品企画に落とし込みやすいし、周りを説得しやすい。一方で、
「インドの方は〇色のプラスチックが好き」
「中国の方は△の匂いがついているプラスチックのを好む」
「インドネシアの方は、押したときちょっと凹むプラスチックが好き」
「日本人は触った時に◆という音を出すプラスチックを好む」
(全部妄想です)
と言われると、「本当か?」という人も出てくると思われる(私も思いそうw)。
●テクノロジーの進化で人の五感を定量化できる時代へ
人の五感に訴えるパーツに落とし込めるようになれば、よりダイレクトにその国に住む人向けにカスタマイズした製品を開発できるのではないだろうか。
「インド人向けプラスチック」
「中国人向けプラスチック」
「インドネシア人向けプラスチック」
「日本人向けプラスチック」
これまでは人がどう観て・触れて・聴いて・匂って・味わっていたかが判らなかったが、既にロボティクスを始めとする人間の五感を定量化したいニーズに伴うセンシングの技術開発が進んでおり、今後五感の見える化が進めば人がその製品や樹脂、パーツに触れた時にどう感じたが定量化され、好ましいスペックに向けて新しい製品開発に繋がるのではないでしょうか。
このような開発のデメリットとしては、上記①で言及したような1製品で量が出ずに固定費率が下げられずコストアップに繋がるという点。これに関しては製造業は「マスカスタマイゼーション」というキーワードで動き始めているので、その解決策とマッチすれば実現するのではと思います。結局人は自分に便利なものにお金を払いますし。
https://www.tel.co.jp/museum/magazine/manufacture/130920_topics_01/02.html
私はディスプレイ関係の製品開発に従事しているので、特に視覚に注目しながら、「インド人向けディスプレイ」「中国人向けディスプレイ」なんてのができれば面白いなあと妄想を続けたいと思います。
そうこう考えていると新横浜へ到着。
おそらく我先に降り口に向かうのが大阪と名古屋の方で、優雅に待っているのは京都の方でしょうか・・・