先日、以下のようなポストをした。
●2019-05.素材とブランド(多分part1) ~素材は"主役"ではなく"ツール"なのか~
http://beyondthechemistry.hatenablog.com/entry/2019/08/13/231840
これは「欧米と比べ日本の素材産業の営業利益率を上げるにはどうすればよいか?」を考えたことが始まり。
素材産業では、ある会社がヒット素材を世に出したとしても、技術的なハードルがない限り他社も追随し同等製品を作り、コモディティ化して価格競争になり収益性は下がる(他産業と同じく)。
その収益性を維持するには、消費者に「性能面とか機能面も重要だけど、私はなんとなくこれがいい!」と思っていただけるような(最終製品の)ブランディングが効果的では、という流れでした。
ブランディングの定義は様々だけれど、私が意味したいのは「この素材が使われているからこれがいい!」と想起してもらえる価値だと定義している。逆に言うと、素材産業でそのブランディングに成功しているケースはほとんどない。
●素材系でブランディングに成功している例
素材でブランディングに成功している事例としていつも思い浮かべるのは以下の2例。
ゴアテックスは主にスキー、スノボの様なスポーツウェアに高い防水性能を、ユニクロ・東レは普段使いの服への吸湿・速乾性能を付与している。
これらは一般消費者の方が製品だけでなくそれを構成する素材の顔まで見える稀な例。稀である一方で、現在では防水加工を施したウェアはゴアテックス以外にも多数存在するし、ヒートテック/エアリズムも同等の競合品が他社から雨後の筍のようにわんさか出ている。
だけど消費者は「なんとなくゴアテックスだと安心」「東レという日本の大手繊維メーカーの素材だから間違いない」という感覚があるのではないか。この感覚はいつか覚めるのでしょうか?私は時代が経つほど覚めてくると予想しています。
●今後素材に求められる価値は?
じゃあ、素材産業としては次にどう対応するのか?
私は、消費者に対して新しい価値、つまりこれまでの機能面の差別化ではなく「これを所有しているのが自分らしさである」というような、新しい価値(世間でいう"意味消費"に近いイメージ)を生み出したいと思っている。
服なら快適性
車なら燃費のような一本軸の機能ではなく、
「それを好んでいる・使っている自分が自分らしさである」という説明がつくイメージ。その中で以下の記事も素材を価値を見出すようなアプローチに見えた。
●商品デザインに素材の力 心動かす新たな魅力実現
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00527561(要無料会員登録)
こういう素材のそもそもの価値を掘り起こす活動は、同じ価値観で揃った社内メンバーではなかなかできない。そこで外部のデザイナー(これまた定義が広い)と連携し、そのデザイナーが実現したい世界を構築するための素材、としての価値を見出してもらうことには大変意義があると思う。
なぜならその世界は他社が簡単に追随できるような世界ではないから。
さらに「日本の」素材産業にとっての寄与を考えた時に、メンターから紹介いただいた以下の記事がそのきっかけになるのではと感じた。
●外国人が欲しがる「日本の高級ブランド」5特徴
https://toyokeizai.net/articles/-/294830
この記事の中に「アルチザン性」という言葉がある。
フランス語で職人、を意味する言葉だが、ここに日本らしさ、日本の良さという価値が発現すれば、その日本らしい世界を構築する素材であれば、日本の素材産業としての役回りにマッチするのではと感じた。
ここでは主要プレイヤーは対象としての顧客であり、日本らしい世界(=製品、サービス)を提案するデザイナー。そしてそのデザイナーが実現したい世界を叶える魔法のツールとしての素材を開発できれば、一つの大きな新しい方向性ではないかと感じる。
じゃあ具体的にどうするの?これまでのアプローチと具体的にどう違うの?というところを次回以降に掘り下げたい。
(part2で終わるはずだったのに・・)