化学産業がシリコンバレーに行く意義-仮説③顧客の動きを察知する

 私は昨年、3月と11月にSVを訪れました。3月は県のネットワーキングプログラムとして30名程度の団体として訪問し、初日にさっそく定番のPlug and Playへ。

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(定番の入り口にある入居者リスト)

 Paypalなどの有名企業と聞いたことのない企業が数多ある中、私の頭の中は「ここにもしうちが入居したらケミカル産業として最初じゃない?」と、入居する意義や目的そっちのけで妄想してました(一番やっちゃいけない考え方)。

 

 そう思いながら「ケミカル、ケミカル・・・」とつぶやきながら探していると・・・・

 

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 DNP(Dai Nippon Printing)

 

 やっぱり一番乗りはないかw そもそもDNPさんはケミカルという領域より、ここではおそらく新しいメディア関係の事業を目的として入居されているのではないだろうかと推察。

 

さらに、ドイツの化学会社「Henkel」も

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(やっぱり化学産業はないなあーーーあ、ヘンケルや!と虚を突かれて手ブレwww)

 

 こういう事をしている時点で、考えが浅いことがよく判ります。 

 

で、何のために入居するの?

 PnP初訪問時は、とにかくここが老舗のインキュベーションオフィスとして「何かすごい場所なんだろう」と思って訪問しました(これもダメなパターン)。

 入居している方の説明では、ここにいるベンチャーはAR、VR、ドローン等のハード系であれ、Fintech等のソフトウェア系であれ、とにかく流行りのベンチャーが多く、日本の企業はその情報をとるために入居している企業も少なくないと聞きました。

 

 そのエリアに「化学企業」が入ってどんな意味があるのか?

 私は(かなり無理矢理)「AR,VR,ドローンも各材料が必要になるから、その動向を把握しそれらのデバイスの実現に向けた素材を提供するんだ!」と考えました。といいながら自分でも全くしっくりきておらず、かといって「ここに化学産業が入ることは無意味だ」とも断言できず、もやもやして帰国しました。

 

「PnPはたいしたことはないよ。ただし・・・」

 そして11月のSV再訪。ある方に「前回PnPに行って、ここに当社が入れば新しい動きができるのでは?と一瞬考えたんですが、その意義や目的がかなり弱いんですよね・・・」と話すと、

 

「PnPが特にスゴイという認識はないし、確かに化学産業が入っても直接的な事業には繋がりにくそう。ただし、

 

我々の顧客がどういうイベントに数多く顔を出している、とか

我々の顧客がどういう情報を欲しがっているとか、

 

そういった顧客の最新の動向は、PnPのようなインキュベーションオフィスや関連イベントに顔を出していると見えてくることがあるので、

"顧客の動きを察知する"という意味だと、ああいうインキュベーションオフィスは使えるかもね」 とコメントを頂きました。

 

 確かに化学産業の顧客である自動車産業や家電メーカーが、今後どう動こうと試行錯誤していて、どういう情報を得たいと思っているかを察知することができれば、それに対して

 

攻めの姿勢:仮に「自動車産業の電気自動車への傾倒が本格的になった」と察知すれば、「電気自動車を構成する素材(EV用電池や高耐熱性樹脂とか・・・)の開発・提供に今以上に本気でシフトさせる」とか

 

守りの姿勢:仮に「顧客自身が材料開発に乗り出そうとしている」と察知すれば、「化学産業が所有しているビッグデータとアルゴリズムを駆使し、材料開発を効率化させる」などの

 

 アクションに対する確度が上がるのでは?と感じました。

 とにかく、何でもかんでも直接的に「自社の動きにつなげられないか?」と考えるだけでなく、「顧客の動きを察知する」という間接的なアクションも意義があるという、私にとっては少し肩の力が抜けた新しい気付きがありました。