SDGsを化学のテクノロジーで実現したい―①イントロ

 ひょんなきっかけから大学の学部を「化学」に選んで以降、気付けば15年が経ちました。

 あのころはそこまで化学に強い想いはなく、唯一興味のあった医薬品を創る手段としての有機合成からスタートしましたが、最近特に「化学」の意義を意識する機会が増えました。

 

 きわめて個人的な意見ですが、私個人としては

これがあるとさらに便利になるね」というモノ・サービスより、

これがないと(文字通り)死んでしまうかもしれない」というモノ・サービスを創りたいという想いが強いです。おそらく人より強すぎます。

 

 例えばスマートフォンには非常に多くの化学素材が使われており、皆さんが持てば持つほど、2年に一度買い替えれば買い替えるほど、売り上げが上がるデバイスです。

(余談:数多ある"モノ"のうち「10万円前後の価格」で「2年に1度の高頻度で当たり前のように消費者が買い替える」ハードは長い歴史上スマホしかない、という話を聞きました)

 

 ただし、仮にiPhone7をiPhoneXに変更しなくても、その人の人生が終わるわけではないし、Galaxy8が今後開発を中止したとしても、体調を壊して入院するわけではない(する人もいるかもしれませんがw)。

 

 そのような材料の開発や供給に対して、私は人生を賭けることができません。もちろん、そのような対象でも全力で開発に邁進しますし、会社の売上向上に貢献したい気持ちは強く持っていますが、「自分の人生を賭けてまで」とは思いません。それよりも、

 

 このろ過膜がないときれいな水が飲めなくなり、子供が体調を崩してしまう

とか

 このDPF(ディーゼルパーティキュレイトフィルター)がないと、車の排気ガスで体調を崩す人が増大する

とか

 この燃料電池によって、車の排気ガスがなくなり環境が改善する

 

の方が、やりがいを強く感じます。

 これは2011年にビジネススクールに入学した際に自分の取り組みたいことを1分で話す機会があり、そのときにうんうんと考えた時に、しっくり来た自分の判断軸でした。

 

SDGs(Sustainable Development Goal)

 上記のような思いが日に日に増してきていた2015年、国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html

 

 これは2001年に類似の枠組みで設定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の後継で、MDGsにいくつかの目標を加え、合計17の目標が設定されています。

f:id:shotam:20180114133915p:plain

(出典:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000270935.pdf

 

 ここには様々な目標がある中、化学が多いに貢献できるゴールもいくつかあるなと思った時、「これがないと(文字通り)死んでしまうかもしれない」という考え方とがちっとはまる感覚がありました。

 

 そう思っていたら、2018年の年頭挨拶で日本最大の化学メーカーである三菱ケミカルホールディングス 小林会長がこんなことをおっしゃっておられました。

 

2018010512kobayashi.jpg

以下引用

「★本当に化学が必要な時代
 社会に貢献するという意味で、化学は極めて重要な産業です。国連のSDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールをみても、化学にしかできないことが非常に多いですよね。空気や水を純化して綺麗にするシステムだとか、自動車の軽量化により温室効果ガスの削減につながる複合材料だとか、有機太陽電池で衣服を作るとか。CO2をカーボン源にして素材を生み出すのも、根源的には化学しかできません。素材はモノの世界で、それは分子の世界です。社会貢献のために化学にしかできないことばかりが残ってきたのです。分子レベルで設計するということでは、DNAも再生医療もそうです。生物学は分子そのものです。学問と産業がほとんど近いところに来る。そこでなければ日本は勝てない。この認識を皆が持つべきだと思います。」

http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2018/01/05-32264.html

 

 私が言うのもおこがましいですが、この内容に完全に同意です。じゃあSDGsが具体的に何で、それに対して化学は具体的にどんなことができるのか?について、自分の頭の整理も兼ねてこの後一つずつピックアップしていこうと思います。