2019年1発目ブログ。
昨年、正月からブログを書きまくり、成人式を待たずに失速した反省を踏まえ、今年は最低でも月1回、素材・化学に纏わる今後のトレンドを、webに載っていない所まで深堀りして記録していこうと思う。
と、これでも十分ハードルが高かったため、今年1発目の更新が今日(1月最終日)になったのだけど。
●MaaSはMaaSでも、Mobilityではなく・・・
今月一番気になった素材系のニュースはこれ。
「素材産業にも「MaaS」 三井化学、義歯を自動設計 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40286970R20C19A1TJ1000/
世間一般に言われるMaaSは"Mobility as a Service"ですが、素材系は当然「Material as a Service」。この記事では三井化学を始め、旭化成、AGCとバイエルやBASF等の名だたる化学系企業が、サービスへのシフトを進めている、という特集が組まれています。
今までは直接の顧客である企業から依頼があって、開発して、量産して、売り切って終わっていた素材を、顧客(企業あるいは消費者)に対して価値があり、かつ継続的なサービスに繋げるかという取り組みが、化学・素材系大企業の中でじわじわ始まっているということでした。
●これまでの開発とどう異なるのか?
今まで素材は軽薄短小という「軽くて」「薄くて」「短くて」「小さい」という目標に向かって開発する方向はありましたが、仮にその機能が実現しても、そのまま価格に反映するとは限りませんでした。
例えば今まで耐久期間が1年だった材料が2年持つようになったとしても、その素材に2倍の値段がつくことは寧ろ稀であったと思います。「前と同じ値段で2倍の耐久性でお願いしますー」的なw
しかし、仮にMaterialにもService、つまりサブスクリプションのような仕組みが使えるなら、「使われれば使われるほど日銭が入ってくる」という仕組みが産まれます。
例えばタイヤ。仮に1本4万円で1セット16万円のスタッドレスタイヤがあるとして、それらの素材の耐久期間が2倍に長持ちします!とアピールして2倍の値段になることはあまりない。
しかし、タイヤのホイールにセンサーを組み込んで回転数をモニタリングすると、「動いた距離に応じて材料にお金払う」という仕組みが作れるのではないか。
そうなると、走った距離だけすり減ったタイヤ(もとい、ゴム)にお金を払うという仕組みは、走った分だけ払っている今の保険と何ら変わらない概念になると思う。
これが実現すれば、耐久性のよい材料、についての研究開発に投資する価値が高くなり、日本が元来得意としていた材料開発技術力が再び活かせるのではないだろうか。同じものを作るだけなら安い土地で安い人件費で低い歩留まりでも大量に作れる大国には勝てない。
他の例としては、例えば掃除機、洗濯機等の家電に使われるプラスチック。
これまでは「耐久性」「高級感」という価値で売り切りのプラスチックが多かったと思われるが、これからは「2年に一度その時の家庭や環境に合わせた素材に交換しますよ」「年齢とともに使いやすい素材や大きさに変えますよ」というカスタマイズすることに対しておカネを払ってもらう仕組みができないだろか。車検ならぬ家電検。
そもそも家庭は、人数や年齢構成が常に変化するものなのに、家そのものや一度買った家電がずっと同じものとして使われ続けることの方がいびつなのでは?と感じる。車は人数によって形変えることは普通なのに。
ということで、ものを使う人が常に変化するのであれば、その人が使うものが変化し、それに対応するサービスにお金を払うことはリーズナブルではないかと思う。
●で、本当にMaterial as a Serviceが実現するのか?
Material as a Serviceに可能性を感じる一方で、大事なポイントは「材料にサブスクリプションの概念が当てはまるのか?」という点。
そう思って、昨年発売された「サブスクリプション」を年末にざっと流し読みしてみた。
サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル 単行本(ソフトカバー) – 2018/10/25
だが、実際の事例は小売業、メディア、飛行機、電車、自動車(これがMaaS)、新聞・出版業界等であり、素材に活かせそうな知見は見つけられなかった。
筆者は「将来、あらゆるビジネスがサブスクリプション化する」という主旨を述べている。近いうちに材料系でも本気でこのような取り組みがじわじわ広がってくるのだろう。
これからの世代に「所有から共有」というマインドが広まってくることを考えると、MaaSを提供する企業が努力するだけでなく、それを受け入れる消費者が増えてくることから考えても、まさに今がチャンスなのだと思う。
【余談】
なんでこういう思考訓練をするのか?ということを考えてみると、単に個々のトレンドを調べ、将来の予測をしてみるだけでは面白くないので、こういう考えをしていくにつれ「あれ?これって新しい事業ネタになるんじゃね?」とか「あ、これ俺がやりたい!」とビビッと来るテーマを自分で探している、ということにも繋がっています。そんなテーマが、今年中に見つかることを期待しながら細々と続けていこうかと。