2019-03.D-Labプロジェクト(第3弾)から考えた素材産業へのチャンス

 私が毎度正座して熟読している「シリコンバレーD-Lab プロジェクト」の第3弾レポートが4月末に公開された。

 

シリコンバレーD-Lab プロジェクト(第3弾)

~シリコンバレーから見えてきたMaaSの世界~

https://www.meti.go.jp/press/2017/01/20180131003/20180131003-2.pdf

 

●これまでのD-Labレポート

 D-Labレポートは2017年、モビリティ業界に起こる変革とチャンスについてのレポートとして公開された。

https://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170404002/20170404002-1.pdf

 今後の自動車産業に対して大きな影響を持つ4つの因子(CASE)を具体的に認識すると共に、自らが関わる素材産業への具体的な影響を予測し、どう対応すべきかを深く考えることができた。

 

 D-Labレポート第2弾は2018年、大企業におけるシリコンバレー新規事業開発に関する内容であった。

https://www.meti.go.jp/press/2017/01/20180131003/20180131003-1.pdf

 

 シリコンバレーと記載されているが、現地であろうと日本であろうと、大きなうねりとなり始めていたデジタライゼーションの動きや新規事業開発について、深い考察と対策がまとめられていた。これも自らの素材産業にとっての影響を具体的にイメージすることができ、「で、どうするよ?」を仲間内で議論することができた。

 

 そして今回の第3弾は、自動車業界における4つの因子からモビリティとして統合的に考えるべきMaaSのトレンドについて、シリコンバレーで実際に起こっていることの紹介や日本の製造業(自動車産業や素材産業)への提言があった。

 

その提言を(勝手に)受け止め、素材産業のビジネスチャンスを妄想してみた。

 

●ビジネスチャンス(妄想)その1:「快適性」付与

 

 レポート中に競争軸やビジネスモデルの変化についての言及があった。

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出典:シリコンバレーD-Lab プロジェクト (第3弾)P42

 顧客は車を求めているのではなく、移動を求めている。その移動に対するサービスの「差別化要因」として"移動時間の短縮、価格、便利"が設定されている。

 これに対して日本の素材産業が真正面に対応しようとすると、どうしても低コストにフォーカスしてしまい、最終的なコスト勝負で勝ち目がない可能性がある。そこで、これらの差別化要因に「快適性」を持ち込めないだろうかと考えた。

 

 同じ移動手段である航空業界でも、フラッグシップキャリアとLCCが顧客やシーンによって棲み分けされているように、例えば5分、10分のようなタクシーでいうワンメーターの移動であれば快適性は求めないだろうが、例えば30分以上の長時間移動なら、快適性は差別化要因になるのではないだろうか。

 たとえばこのGWのようにどこも混雑するタイミングで、高級ソファーのようなすわり心地や、内装全面にフレキシブルディスプレイがあって大画面でエンターテイメントが提供できる等のサービスがあって、従来より+1,000円で提供されれば、例えばお子さん連れの家族などへは喜ばれるのではないだろうか。

 (具体例:低反発素材、人口皮革、フレキシブルディスプレイ等)

 

●ビジネスチャンス(妄想)その2:素材のサブスクリプション~Material as a Service~

 

 P106に、私が十分理解し切れない内容があった。

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出典:シリコンバレーD-Lab プロジェクト (第3弾)P106

 MaaSプラットフォームを提供する企業(MaaS企業)が稼働率が上がると収益が向上するのは判るが、彼らに自動車を提供する自動車製造業は車を売り切りで提供するのだろうか?それとも車も使った分だけ対価を支払うサブスクリプションの形で提供するのであろうか?

 もし後者であれば、素材産業も自動車産業へ素材をサブスクリプションで提供できる可能性がある。これが可能になれば、長持ちする素材(=低メンテナンスコスト)の価値が高くなるだろう。

 

 今までの素材や製品は、長持ちしてしまうとそれだけ交換需要が減ることから、売上を向上したいい製造業としては「丈夫な製品」と「交換頻度」がトレードオフになっていた。それが、長持ちすればするほど高く評価されるというのは、素材業界や研究者にとってとても健全だ。具体的に自動車部品としては、摩耗しにくいタイヤや、自動修復材料、太陽にさらされても見た目を保つ対候性が高い材料が重宝され得る。この分野は日本の素材産業は結構ガチンコ勝負できると感じる(P108,109に同様の言及有)。

 

具体例:低摩耗タイヤ、自動修復材料、高対候性プラスチック(ボディー、インパネ等)

 

●ビジネスチャンス(妄想)その3:低環境負荷素材

 P89に以下のようなスライドがあった。

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出典:シリコンバレーD-Lab プロジェクト (第3弾)P89

 現状、MaaS企業のアプリを使うと(例:Uber)、A地点からB地点へのルートをリサーチすると、最適な(=早くて安い)サービスを提案してくるが、近い将来、「社会(環境)にとって」一番最適なルートも提示できるようになるだろう。それは全てライドシェアで済ますのではなく、例えば「徒歩」+「バス」+「ライドシェア」の組み合わせを提案してくる。

 このサービスは、サステイナブルや環境負荷低減に関心のある消費者へはとても訴求力があると感じる(私もそのような選択肢が提示されたら使ってみたい。地球に優しい人になりたいから)。そもそも車を持たなくなった消費者は効率性と共にそのような意識が高まっているのだと考えている。

実際日本でも様々な移動手段があるが、新幹線を提供するJRは、自家用車より飛行機よりバスより、新幹線が最もCO2低減効果が大きいことを"エコ出張"と銘打っている。

https://museum.jr-central.co.jp/materials/_pdf/tech_01_ha.pdf

 

 これは移動時のエネルギー効率の比較だと思うが、素材産業である我々の立場で考えても、その素材を作る際に必要なエネルギーや水の使用量を低減することで消費者に対してアピールすることができないだろうか。

「この移動手段(を提供するハードを構成する素材)を使うと、CO2や水の削減に繋がり、地球にやさしい移動になりますよ」的な。複数ある選択肢から、心と時間の余裕があるときは積極的に使ってみたいと感じる。だって地球にやさしい人間になりたいので。

 (具体例:各種素材の高効率製造技術)

 

 

 まだ他にも考えられそうですので、いろんな人と議論しつつ、今自分が始められることにつなげていきたいと考えています。

 

 

 

 

ということで、殆ど使っていない自家用車を昨日売却しましたww