自分で広げた「素材とブランド」に関する着地点が見えない。。
●2019-05.素材とブランド(多分part1) ~素材は"主役"ではなく"ツール"なのか~
http://beyondthechemistry.hatenablog.com/entry/2019/08/13/231840
●2019-06.素材とブランド(part2) ~素材に"新しい意味"を与えるデザイナー~
http://beyondthechemistry.hatenablog.com/entry/2019/08/18/132415
そもそも考え出した背景として
・日本の化学・素材産業は自動車、家電、製薬といった利益率が異なる業界に製品を提供しているにも関わらず、総合化学企業の営業利益率が見事にある地点(5%前後)に着地している
・これは素材そのものでの差別が難しいためであろう(この材料は儲かる!と判りかけた瞬間、他社は技術的に模倣。その結果価格勝負になって売価減→利益減)
・収益性を上げるには「この素材は唯一無二である」と思われ(せ)るブランド化が一つのアプローチ。しかし素材だけの差別化に意味があるのか?そうならば最終消費者へ価値を提案するBtoC企業が創る世界を実現するための"すぐ傍にあるツール"に徹した方がよいのでは、というのがpart1
そのBtoC企業が創ろうとする世界は、製品の一本軸の特性最高値が喜ばれる世界であった(部品なら"軽く/薄く/短く/小さく"の軽薄短小)。
しかし、近年豊かになってモノを持たない世代も増えてきた。その製品を使う(使わない)自分が"自分"であるという「意味消費」の割合が増え、ニーズも多様化してきたことから、それぞれの世界を具現化できるデザイナーさんとの連携が大事であろうとまとめたのがpart2であった。
●新たな疑問「そもそもデザイナーって??」
ではそのようなデザイナーさんと具体的にどうやって連携を進めていくのだろうか。それを考える前にもう一つ疑問が湧いた。
「デザイナー、デザイナーっていうけど、これまでも今も新しい自動車や家電を作る際には各社社内にデザイナーさんがいるはず。それと外部(独立)デザイナーさんはどう違うのか?」
企業内デザイナーの友人にこの件を相談したところ、私の理解を超えるフィードバックを受け、私の頭はパンク状態に。自分の言葉で乱暴にまとめると、
・外部デザイナーの役割はプロダクトデザイン、ブランドデザイン、全体のプロジェクトマネジメント、デザインコンサルティングと多様である
・一方、社内デザイナーは専業(単一製品を担当)であることが多く、広い視野で活動できる人は限定的
・そもそもデザイナーとは絵を書く人のことではなく、「世の中全体を俯瞰し、課題を深堀りした上でその問題点を抽出し、解決策を妄想して形にする人」である
(デザイナーの方、認識違いをしていたらごめんなさい)
●これからの意味消費と外部デザイナーさんとの親和性
ここまでくると「なるほど」と思うことがあった。つまり、従来のBtoC企業内のデザイナーさんは、自社の製品やサービスのためにコンセプトやブランドやプロダクトをデザインする構造になりがち。
一方で外部の独立デザイナーさんは「これからの世界がどうなるか」「その時どういうサービスが求められるか」を起点に考察し、今存在していない「世の中にとって価値のある製品・サービス」を考える。
それを形にしようと動き出すとどうしても世の中にない新しい素材や機能を持ったパーツが必要になり、それが素材業界へニーズとして変換され、我々の出番!となる。これは社内のデザイナーさんからは産まれにくいジャンルなのではないだろうか。
●意味消費→デザイナー→素材産業というバリューチェーンに乗るために
1年ほど前にある化学企業と外部デザイナーさんとのコラボレーションの話を聞いた。その時、「むちゃくちゃ興奮した!ただ、この取り組みがうまく機能したとして当社に紹介して具体的に動き出すのは難易度高いなあ」と諦めかけていた。しかし、その方の後でさらっとコメントした内容がグサッ!と刺さった。
「こういう取り組みをどんどん発信し、
顧客から3番目に声をかけてもらう存在になりたい」
これ、素材業界に従事する方は首がもげる程頷いているのではないだろうか。
我々の直接の顧客であるBtoCの企業さんは、ある製品を開発するために素材産業へ新しいリクエストをする際、できそうな会社3社程度に声をかけることが多い(個人の感想)。
つまり、実際にはその次の4社目、5社目が一番最適な解決策を提示してくれるかもしれないけど、その会社は4社も5社も同時に付き合っている時間の余裕がないので「なんか面白そうな提案をしてくる会社を2-3社」に絞って声をかけている。
今までは「A社、B社、C社」の3つだけだったところに「あの会社、最近色々面白い取り組みをしているからちょっと声かけてみようか」と思わせるだけで大成功。本当に大成功。それ以降は技術力と提案力と多少の政治力の総合格闘技。
しかし、総合格闘技で争うためにはまずは土俵に上がらねばならない。その意味で「あの会社最近おもろいよね」とBtoC企業だったり、最終消費者の方に思ってもらうのはむちゃくちゃ意義がある。
そしてこのような活動をどんどんPRしていけば、様々なデザイナーさんに声をかけてもらい、これからの世の中に求められるニーズと、それを実現できる企業とのコネクションの確率がどんどん高くなる。
●(強引な)まとめ
こうすることで、ともすれば世の中の動向から離れた場所である素材産業でも、世の中の動向に対する「俯瞰・深掘・疑問・妄想」している人(デザイナー)と一人でも多く接し、新しい価値を産み出せるのではないでしょうか。
そしてこのような人が社外だけでなく、社内にいることもその会社の差別化要因になるのではないかとも感じた。
次の具体的なアクションとして、自分自身も当事者として「当社はあんなこともこんなこともしています」という公開情報をもっといろんな媒体を使ってオープンにしていこうかと。そうすれば思わぬつながりから新しい事業のタネが見つかるかもしれない。そこは全力で他力本願で。
無理やり広げた素材とデザインに関する話が、なんとなく自分が納得する着地点に来れたかなと。。