2020-02. プラネタリーバウンダリー×化学を考える(part2:項目相関図(個人的まとめ))

 前回のブログでついに「人類が地球に対してお金を払おうとしている時代」が来た!と書いた。


世の中にはいろんなタイプの人がいますが「今ある美しい地球を守りたい」という気持ちに対して全力で反対!という人はほぼいないのではないでしょうか。

 

その地球を守るための指標となる項目が「プラネタリーバウンダリー」です。

ja.wikipedia.org

 

プラネタリーバウンダリーは、2009年ストックホルム・レジリエンス・センター所長のヨハン・ロックストローム氏を中心にしたグループが提唱した、以下の9つの項目から構成されます。

 

・気候変動

・生物圏の保全

・新人工物質

・成層圏オゾンの破壊

・海洋酸性化

・リンおよび窒素サイクル

・土地利用の変化

・淡水利用

・大気エアロゾルの負荷

 

以前紹介した「小さな地球の大きな世界」(丸善出版)では、この9つの項目についてある程度の定量的データを元に、2014年時にどういう状態であるかが記載されています。

www.maruzen-publishing.co.jp

 

 それぞれの項目について「まだ許容範囲内である」「危険な状態だが挽回可能」「もう取り返しがつかない状態」という点も記載されています。ただし、これらの解釈は人によって異なりそうなので、自分の頭で考えようと思っています。

  

 その前に、そもそもこの9つがどういう分類でどういう因果関係になっているかを整理してみました。

 

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(注:投稿者の個人的まとめです)
●まとめて見た感想

 地球にとって影響が大きいであろう、人口増加と経済発展を出発点に考えてみました。こうしてざっと眺めると、人口増から食糧増に伴う「農業・畜産・漁業」といった食糧を生産する産業を起点とする影響が多いなと感じました。

 なお、9個のプラネタリーバウンダリーのうち「リン・窒素サイクル」と「生物圏の保全(特に生物多様性)」は、2014年時点で既に限界点を超えていると上記の本で指摘されています。そして次に危ないのは「土地利用の変化」です。

 「リン・窒素サイクル」に関しては食糧増のニーズに応えるため、農地でリンや窒素を肥料として使っていることも影響していると想定していますし、農地拡大による土地利用の変化、並びに人口増加や都市化と相まって生物多様性の減少に影響する可能性があるなど、影響力が大きいのでは、というのが今回のまとめの気付きでした。

 いわゆる代替肉や、Agritechと呼ばれる農業を効率化するテクノロジーも含め、近年のフードテックはここへアプローチしていると考えると、応援したくなる動きです。

 

 次以降からは個別の項目についてもう少し整理しつつ、どこが本当に解決すべき点なのかについて、自分の考えを述べたいと思います。

2020-01. プラネタリーバウンダリー×化学を考える(part1:イントロ)

1月前半に1つイベントを終え、さあブログ始めようと思った矢先、新たなトラブル勃発。さすが本厄の大厄。初詣で厄除け祈願してもらえばよかった。。

 

ということで、トラブルも少し落ち着いたため、今年一発目ブログ。

 

今年1つ目のテーマはこれにしようと昨年から決めていました。「プラネタリーバウンダリー」について深掘りしようと考えています。

 

なぜ2020年1つ目のテーマをプラネタリーバウンダリーにしようと思ったかというと、「人類史上初めて、人類が地球をなんとかしよう、地球のためにお金を払おうとしている時代が来たのでは」と考えているためです。

 

●そもそもプラネタリーバウンダリーとは?

 プラネタリーバウンダリーとは「人類の活動がある閾値または転換点を通過してしまった後には取り返しがつかない「不可逆的かつ急激な環境変化」の危険性があるものを定義する地球システムにおけるフレームワークの中心的概念である。「地球の限界」 、あるいは「惑星限界」とも呼ばれる。」(引用:wikipedia)

 

 

ja.wikipedia.org

 

 簡単に言うと「地球が大変なことになる前に、地球を守るために順守すべき項目」と個人的に解釈しています。これらを守ることで、人類は地球のキャパシティ内で活動し続けられると捉えています。

 

 世の中全体を「人」と「地球(環境・社会)」に分けるとすると、私の属する化学・素材産業は主に「地球の苦しみを減らす/地球の快適を増やす」ことに大きく貢献できると考えています。

 他方で「人の苦しみを減らす(ヘルスケア・医療)や人の喜びを増やす(QOL向上))」ことは、医療機器や医薬品、エンターテインメント、旅行やゲーム等いろんな方法があり、必ずしも化学・素材産業が主役になれるとは限らない。

 

 そう考えると、化学・素材産業に携わる者として、地球に貢献できる素材やテクノロジーに対して、研究開発や事業化に携わりたいしなあと考えていました。

 

●人類が地球に対してお金を払おうとしている時代

 しかし、これまではそのようなテクノロジーがなかなか地球に貢献できなかったと感じています。例えばかつてのレジ袋有料化の取り組みが典型的な例。

 スーパー、コンビニを始めとするレジ袋は、今でこそマイクロプラスチックや海洋プラスチックの問題から悪者扱いされていますが、過去にもレジ袋を生分解性プラスチックを用いてゴミにならないような取り組みはありました。

 

 しかし合理的な消費者の方は「今まで無料だったレジ袋を何で有料で買わないといけないんだ」という考えを持ち、極論「0円で環境に残るレジ袋」が「10円で環境に残らないレジ袋」を駆逐していた時代がずっと続いてきたという認識です。

 

 ところが、上記のプラスチック問題が(私の想定より)長く持続し、カフェを始めとする飲食店が次々にプラ性ストローを代替する動きが出てきました。

 

 特に若い層を始めとする消費者も「地球に優しくないとダメだよね」というマインドが定着しつつあり、そんな消費者にサービスを提供する企業側も「そんな消費者に受け入れられるよう、わが社も環境問題を解決する取り組みを(お金を出してでも)行おう」という動きになり、これが持続しているのが2019年以降ではないかと感じる次第です。

 

 これは少なくとも私にとってはめちゃくちゃいい時代。こんな時代、今まで初めてでは?と思う位です。

 

●プラネタリーバウンダリーを学ぶ

 ということで、この地球を守ることがビジネスに繋がり得る時代に、どんな順守すべき項目があるのかを包括的に把握しようと思い、知り合いの紹介で昨年秋ころから読んでいたのが「小さな地球の大きな世界」という本です。

 

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小さな地球の大きな世界-プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発

 

 この本、私に関心のあるテーマが盛りだくさんで大変勉強になったのですが、翻訳の問題か構成のためか、とても読みにくかった・・・

 本は3000円以上するわ電子書籍もない状態ですが、ざっと概要を知りたい方は出版社から要点をまとめたpdfがあるのでこちらをどうぞ。

 

小さな地球の大きな世界』パンフレットpdf

https://www.maruzen-publishing.co.jp/files/%E6%9B%B8%E7%B1%8D%E5%96%B6%E6%A5%AD%E9%83%A8/%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%82%B0PDF/%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E5%9C%B0%E7%90%83%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E4%B8%96%E7%95%8C_%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88.pdf

 

 地球を守るための守るべき項目が9個挙げられています。提唱されたのは2009年。

 ちなみにこのプラネタリーバウンダリーに関しては賛否両論あります。例えば気候変動に関しては「CO2増加は温暖化に繋がっているのか?設定された限界値は正しいのか?」云々。これはまだ結論が出ていませんし、これからもしばらくは結論はでないでしょう。

 

 これも自分の頭でしっかり考えないといけないですが、とはいえ「守るに越したことはない」項目ばかりですので、次回以降、それぞれについておさらいしたうえで、化学・素材で新たに取り組めることがないか?について考えていこうと思います。

 

2019-09. 素材企業におけるサーキュラービジネス~(part2:"廃棄価値"という新しい軸)

年の瀬に素材産業におけるサーキュラービジネスを考える第2弾。

 

 第一弾では世の中全体のサーキュラーエコノミーを考えるより、自分の手の届く範囲で確実に廃棄している"自社の廃棄物"に着目し、それらを活用して新しい価値を産んだり、他の使い道がないかを考えてみようと思った。

 

beyondthechemistry.hatenablog.com

 

●製品のリセールバリュー

 このブログの中で「一生の中で高価な買い物に分類される、家や車、衣服などであっても、使いたいときに手元にあればよい、複数人でシェアしてコストを押さえる、それが合理的だよね、と考える人の割合が少しずつ増えてきている」と記載した。

 家も車も人間にとって大切、だけどやっぱり高い。そうなるといざ何かあって手放すときに、それが資産となって高く売れるか?という「リセールバリュー」を念頭にいれつつ購入してきた人が多いであろう。それが人気のエリアにある住居なのか、あるいは中古車市場に人気のある車なのか。

(私が社会人になって最初に買った車は知り合いから「この会社はリセールバリュー低いよ」とはっきり言われたのを思い出した汗)

 

 家も車も高価な買い物だから判るが、衣服等の嗜好品や消耗品の部類でさえも、売却を意識して新品を購入している、という記事もあった。

about.mercari.com

 

これはサステナビリティという世間の潮流が今の若い世代からじわじわと浸透し始めている現代に、スマホや画像認識というテクノロジーの進化がマッチして無理なくCtoCでやり取りできるようになったということなのだろう。

 

●素材における"廃棄しやすさ"とは?

 ようやく本題。今まで顧客における製品の価値というのは「製品の中核」「製品の実体」「付随機能」という3層モデルになっていた。

cyber-synapse.com

 

 スマホだったら「①(当然ながら)話せる」「②(さらに)写真も撮れる」「③(おまけに)アフターサービスもある」という3層。これらがすべて満たされるとコスト勝負にシフトし、同じものをどこでも作られるようになると、より人件費や工場建設費の安い途上国にシフトするのは合理的な流れ。

 これに、これから「廃棄しやすさ」という価値が新たに産まれないだろうか。「廃棄しやすい」「分解しやすい」「分離しなくてもよい(=1材のみで構成される)」材料や、「アップサイクルしやすい」「CO2を環境に出しにくい」樹脂等。

 

 新しい軸の価値が産まれると日本の素材産業主導で世の中の人や地球に新しい価値を訴求できるのではないかと思う。

 

2019-08. 素材企業におけるサーキュラービジネス~(part1:自社の"廃棄物"を考える)

2019年もあと半月。

今年に入って「サーキュラーエコノミー」という単語を聞く機会が増えた。

www.huffingtonpost.jp

 

 記事中でサーキュラーエコノミーとは「従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルに代わる、地球環境や労働環境にも持続可能性をもたせるオルタナティブな経済の仕組み」とされる。

 

 ここに述べられている「従来の大量生産、大量消費」は従来の製造業の前提であった。人々が求めるモノをなるべく低コストで作るには、大量消費される前提で大きな工場で大量に作り、少しでも固定費を減らすことで製造コストを下げ、販売価格を下げていた。

 しかし今や、一生の中で高価な買い物に分類される、家や車、衣服などであっても、使いたいときに手元にあればよい、複数人でシェアしてコストを押さえる、それが合理的だよね、と考える人の割合が少しずつ増えてきている。

 このトレンドはほとんどの製造業(とそこに素材を提供する素材産業)にジワジワ影響を及ぼしてくるだろう。私が従事する素材産業としてどう行動していけばいいのか?という点を考え、行動しよう。

 

●素材企業におけるサーキュラービジネスとは?

 ここではあえて「サーキュラービジネス」という言葉に変えた。経営陣が「我々はサーキュラー"エコノミー"を実現します」というのはビジョナリーでよいが、現場の人間はサーキュラー"ビジネス"にして持続可能にしないといけない。

 その点で、先月発表された以下の取り組みは今話題の海洋ゴミを活用したサーキュラーエコノミーの実現に向けて大変啓蒙的ではある一方、コストを推測するにビジネスとしては成り立ちにくく、これはサーキュラービジネスに向けた端緒についた、という位置づけなのであろうと感じた。

www.sustainablebrands.jp

(記事より一部引用:テラサイクルでアジア地域を担当するエリック・カワバタ氏は「P&G社の協力がなければ実現できなかった」と話し、シャオファン氏はコストについて「赤字ではない」と言うに留まった) 

 

 「海洋ゴミ」や「マイクロプラスチック」は"世の中に出している"廃棄物。これに対して各企業がタッグを組んでこの問題を解決しよう!と動き出すのは良い流れであるが、どの企業がどの工程を解決するのか、そもそも廃棄される経路も複雑であり、少なくとも私は一体どこから手を付けていいか判らなかった。

 

 それよりももっと「自分が廃棄していることが明確で」「廃棄経路がシンプルで」「対策を考えやすい」廃棄物があるじゃないか、と気付いた。

 

 それは"自社が出している廃棄物"である。概要ゴミやマイクロプラスチックだけがサーキュラーエコノミーの対象ではない。

この考えは最近以下の本を読んでいて気付いた視点でもある。

 

ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4296103636/ref=dbs_a_def_rwt_bibl_vppi_i1

 

●"自社が廃棄している廃棄物"を減らす / 付加価値を与えることを考える

 化学企業なら「製造で使った排水」「原料が入っていた包袋」「実験室で使ったピペット」「使い捨てのガラス瓶」、さらには「製造時に副生する中間体やガス」など、たくさんの"廃棄物"が存在する。

 現在はそれらをある程度分類して(一部は再利用するものもあるが)廃棄し、まとめて焼却処分されているだろう。それを、何をどれくらい捨てているか判る自社だからこそできる方法を考えようと思う。

 自社では不要だが他の企業に求められないか、アップサイクルの方法がないか、別の用途に使えないか、少し加工して他の価値を生まないか・・・

 

●自社の廃棄物=自社の課題の解決

 今までは消費者にとって満たされていないニーズを満たすため、まずは製品の性能を向上させて顧客に性能面で訴求していた。

 巨大な産業である自動車も、まずは人を速く遠く快適に運びたいニーズから生まれたと考えると、今彼らが取り組んでいるEVや自動運転技術は、その製品が生み出した副作用、つまり自動車の排気ガスや交通事故を解決するサービスであると言える。

 

 化学・素材産業は、まずはその自動車(製品)を構成するために必要な材料を作ってきた。

 次はその材料を作るために付随した困りごと(環境汚染 / エネルギー消費等)を解決するために動ける時代が来た。これらは地球の環境問題の解決に繋がるアクションでもあるが、これまでは地球がお金を払ってくれる訳ではなく、「やってることは正しいがお金が稼げない」側面もあった。例えばレジ袋が通常無料か1枚5円で買っているところ、地球に優しい生分解性プラスチックで100円かかる、と言われると多くの人は選ばないだろう。

 

 しかし今や、欧州を始めとする各企業は、サーキュラーエコノミーを本気で押しており、最終顧客も性能ではなく地球に優しい姿勢を見せる企業を選ぶようなトレンドが来つつあると感じる。いい時代が来ている。個人的には、来年はそれに向けて全力で動いてみようと思う。

2019-07.素材とブランド(part3) ~「この件はあいつに頼ろう!」と想起されること~

 

自分で広げた「素材とブランド」に関する着地点が見えない。。

 

●2019-05.素材とブランド(多分part1) ~素材は"主役"ではなく"ツール"なのか~

http://beyondthechemistry.hatenablog.com/entry/2019/08/13/231840

●2019-06.素材とブランド(part2) ~素材に"新しい意味"を与えるデザイナー~

http://beyondthechemistry.hatenablog.com/entry/2019/08/18/132415

 

そもそも考え出した背景として

・日本の化学・素材産業は自動車、家電、製薬といった利益率が異なる業界に製品を提供しているにも関わらず、総合化学企業の営業利益率が見事にある地点(5%前後)に着地している

・これは素材そのものでの差別が難しいためであろう(この材料は儲かる!と判りかけた瞬間、他社は技術的に模倣。その結果価格勝負になって売価減→利益減)

・収益性を上げるには「この素材は唯一無二である」と思われ(せ)るブランド化が一つのアプローチ。しかし素材だけの差別化に意味があるのか?そうならば最終消費者へ価値を提案するBtoC企業が創る世界を実現するための"すぐ傍にあるツール"に徹した方がよいのでは、というのがpart1

 

 そのBtoC企業が創ろうとする世界は、製品の一本軸の特性最高値が喜ばれる世界であった(部品なら"軽く/薄く/短く/小さく"の軽薄短小)。

 しかし、近年豊かになってモノを持たない世代も増えてきた。その製品を使う(使わない)自分が"自分"であるという「意味消費」の割合が増え、ニーズも多様化してきたことから、それぞれの世界を具現化できるデザイナーさんとの連携が大事であろうとまとめたのがpart2であった。

 

●新たな疑問「そもそもデザイナーって??」

 ではそのようなデザイナーさんと具体的にどうやって連携を進めていくのだろうか。それを考える前にもう一つ疑問が湧いた。

 「デザイナー、デザイナーっていうけど、これまでも今も新しい自動車や家電を作る際には各社社内にデザイナーさんがいるはず。それと外部(独立)デザイナーさんはどう違うのか?」

 

 企業内デザイナーの友人にこの件を相談したところ、私の理解を超えるフィードバックを受け、私の頭はパンク状態に。自分の言葉で乱暴にまとめると、

・外部デザイナーの役割はプロダクトデザイン、ブランドデザイン、全体のプロジェクトマネジメント、デザインコンサルティングと多様である

・一方、社内デザイナーは専業(単一製品を担当)であることが多く、広い視野で活動できる人は限定的

・そもそもデザイナーとは絵を書く人のことではなく、「世の中全体を俯瞰し、課題を深堀りした上でその問題点を抽出し、解決策を妄想して形にする人」である

(デザイナーの方、認識違いをしていたらごめんなさい)

 

●これからの意味消費と外部デザイナーさんとの親和性

 ここまでくると「なるほど」と思うことがあった。つまり、従来のBtoC企業内のデザイナーさんは、自社の製品やサービスのためにコンセプトやブランドやプロダクトをデザインする構造になりがち。

 一方で外部の独立デザイナーさんは「これからの世界がどうなるか」「その時どういうサービスが求められるか」を起点に考察し、今存在していない「世の中にとって価値のある製品・サービス」を考える。

 それを形にしようと動き出すとどうしても世の中にない新しい素材や機能を持ったパーツが必要になり、それが素材業界へニーズとして変換され、我々の出番!となる。これは社内のデザイナーさんからは産まれにくいジャンルなのではないだろうか。

 

●意味消費→デザイナー→素材産業というバリューチェーンに乗るために

 1年ほど前にある化学企業と外部デザイナーさんとのコラボレーションの話を聞いた。その時、「むちゃくちゃ興奮した!ただ、この取り組みがうまく機能したとして当社に紹介して具体的に動き出すのは難易度高いなあ」と諦めかけていた。しかし、その方の後でさらっとコメントした内容がグサッ!と刺さった。

 

「こういう取り組みをどんどん発信し、

顧客から3番目に声をかけてもらう存在になりたい」

 

 これ、素材業界に従事する方は首がもげる程頷いているのではないだろうか。

 我々の直接の顧客であるBtoCの企業さんは、ある製品を開発するために素材産業へ新しいリクエストをする際、できそうな会社3社程度に声をかけることが多い(個人の感想)。

 

 つまり、実際にはその次の4社目、5社目が一番最適な解決策を提示してくれるかもしれないけど、その会社は4社も5社も同時に付き合っている時間の余裕がないので「なんか面白そうな提案をしてくる会社を2-3社」に絞って声をかけている。

 

 今までは「A社、B社、C社」の3つだけだったところに「あの会社、最近色々面白い取り組みをしているからちょっと声かけてみようか」と思わせるだけで大成功。本当に大成功。それ以降は技術力と提案力と多少の政治力の総合格闘技。

 しかし、総合格闘技で争うためにはまずは土俵に上がらねばならない。その意味で「あの会社最近おもろいよね」とBtoC企業だったり、最終消費者の方に思ってもらうのはむちゃくちゃ意義がある。

 そしてこのような活動をどんどんPRしていけば、様々なデザイナーさんに声をかけてもらい、これからの世の中に求められるニーズと、それを実現できる企業とのコネクションの確率がどんどん高くなる。 

●(強引な)まとめ

 こうすることで、ともすれば世の中の動向から離れた場所である素材産業でも、世の中の動向に対する「俯瞰・深掘・疑問・妄想」している人(デザイナー)と一人でも多く接し、新しい価値を産み出せるのではないでしょうか。

 そしてこのような人が社外だけでなく、社内にいることもその会社の差別化要因になるのではないかとも感じた。

 

 次の具体的なアクションとして、自分自身も当事者として「当社はあんなこともこんなこともしています」という公開情報をもっといろんな媒体を使ってオープンにしていこうかと。そうすれば思わぬつながりから新しい事業のタネが見つかるかもしれない。そこは全力で他力本願で。

 

 

 無理やり広げた素材とデザインに関する話が、なんとなく自分が納得する着地点に来れたかなと。。

2019-06.素材とブランド(part2) ~素材に"新しい意味"を与えるデザイナー~

先日、以下のようなポストをした。

 

●2019-05.素材とブランド(多分part1) ~素材は"主役"ではなく"ツール"なのか~

http://beyondthechemistry.hatenablog.com/entry/2019/08/13/231840

 

 これは「欧米と比べ日本の素材産業の営業利益率を上げるにはどうすればよいか?」を考えたことが始まり。

 素材産業では、ある会社がヒット素材を世に出したとしても、技術的なハードルがない限り他社も追随し同等製品を作り、コモディティ化して価格競争になり収益性は下がる(他産業と同じく)。

 その収益性を維持するには、消費者に「性能面とか機能面も重要だけど、私はなんとなくこれがいい!」と思っていただけるような(最終製品の)ブランディングが効果的では、という流れでした。

 

 ブランディングの定義は様々だけれど、私が意味したいのは「この素材が使われているからこれがいい!」と想起してもらえる価値だと定義している。逆に言うと、素材産業でそのブランディングに成功しているケースはほとんどない。

 

●素材系でブランディングに成功している例

 素材でブランディングに成功している事例としていつも思い浮かべるのは以下の2例。

 

 

 

 

 

 

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出典:https://www.gore-tex.jp/

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出典:https://toyokeizai.net/articles/-/181356

 

 ゴアテックスは主にスキー、スノボの様なスポーツウェアに高い防水性能を、ユニクロ・東レは普段使いの服への吸湿・速乾性能を付与している。

 

 これらは一般消費者の方が製品だけでなくそれを構成する素材の顔まで見える稀な例。稀である一方で、現在では防水加工を施したウェアはゴアテックス以外にも多数存在するし、ヒートテック/エアリズムも同等の競合品が他社から雨後の筍のようにわんさか出ている。

 だけど消費者は「なんとなくゴアテックスだと安心」「東レという日本の大手繊維メーカーの素材だから間違いない」という感覚があるのではないか。この感覚はいつか覚めるのでしょうか?私は時代が経つほど覚めてくると予想しています。 

●今後素材に求められる価値は?

 じゃあ、素材産業としては次にどう対応するのか?

 私は、消費者に対して新しい価値、つまりこれまでの機能面の差別化ではなく「これを所有しているのが自分らしさである」というような、新しい価値(世間でいう"意味消費"に近いイメージ)を生み出したいと思っている。

 

 服なら快適性

 車なら燃費のような一本軸の機能ではなく、

 

 「それを好んでいる・使っている自分が自分らしさである」という説明がつくイメージ。その中で以下の記事も素材を価値を見出すようなアプローチに見えた。

 

●商品デザインに素材の力 心動かす新たな魅力実現

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00527561(要無料会員登録)

 

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出典:https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00527561

 

 こういう素材のそもそもの価値を掘り起こす活動は、同じ価値観で揃った社内メンバーではなかなかできない。そこで外部のデザイナー(これまた定義が広い)と連携し、そのデザイナーが実現したい世界を構築するための素材、としての価値を見出してもらうことには大変意義があると思う。

 なぜならその世界は他社が簡単に追随できるような世界ではないから。

  

 さらに「日本の」素材産業にとっての寄与を考えた時に、メンターから紹介いただいた以下の記事がそのきっかけになるのではと感じた。

 

●外国人が欲しがる「日本の高級ブランド」5特徴

https://toyokeizai.net/articles/-/294830

 

 この記事の中に「アルチザン性」という言葉がある。

 フランス語で職人、を意味する言葉だが、ここに日本らしさ、日本の良さという価値が発現すれば、その日本らしい世界を構築する素材であれば、日本の素材産業としての役回りにマッチするのではと感じた。

 

 ここでは主要プレイヤーは対象としての顧客であり、日本らしい世界(=製品、サービス)を提案するデザイナー。そしてそのデザイナーが実現したい世界を叶える魔法のツールとしての素材を開発できれば、一つの大きな新しい方向性ではないかと感じる。

 

 じゃあ具体的にどうするの?これまでのアプローチと具体的にどう違うの?というところを次回以降に掘り下げたい。

(part2で終わるはずだったのに・・)

 

 

2019-05.素材とブランド(多分part1) ~素材は"主役"ではなく"ツール"なのか~

暑い。連日暑い中、毎年恒例の化学業界売上 global top50がChemical&Engineering Newsから報告された。

https://cen.acs.org/business/finance/CENs-Global-Top-50-chemical/97/i30

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出典:https://cen.acs.org/content/dam/cen/97/30/WEB/globaltop50-2018.pdf

(上記は上位30位までの抜粋)

 

 なお、上記の売上高や利益の集計は会社全体の売り上げではなく化学部門のみ。よって化学会社の一部門となる場合もある製薬部門は含まれていない。

 

●日本企業の営業利益率の低さ

 最初に目につく売上ランキングに関しては、Dow/Dupontの強強合併で新会社誕生により、これまで盤石首位だったBASFに替わってトップになった以外は大きな変動はない。

 一方で、chemical operating profit margin(化学部門の営業利益率)における、日本企業のそれの低さが気になった。

 

 top30までの半分以上の会社の営業利益率は10%を超えている中(これもすごいと思うけど)、10%を下回っているのは奇しくも日本、中国、韓国、タイ等のアジア企業。

 これらの企業がアジア地域に固まったのが偶然なのか、何か本質的な理由があるかを考えるのも興味深いが、ここでは一旦スルーするとして汗、日本企業の営業利益率の低さは、ここ数年変わらず低空飛行のまま。

 おそらく各社経営層はこのことを課題に感じ、ロジカルな攻め手を考えているだろう。そこで、ここではもう少しぶっ飛んだ対策を考えてみようと思った。

 

●ぶっ飛んだ利益率を出している他業界は?

 利益は(売上)-(コスト)。これまでの企業努力を考えると現状のビジネスを保ったままコストを下げることには一定の限界があろう。そこで売上を上げることを考えてみる。とはいえ、素材業界の範疇で考え続けていてもぶっ飛んだ手は出てこない。

 そこで、他の業界でびっくりするような利益率や価格設定をしている業界がないか考えてみた。

 

 

高い利益率、高い利益率・・

 

 

 

 

ぶっ飛んだ価格設定・・・

 

 

 

 

 

うーん、ダメだ、こういうのしか思いつかない

 

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photo from Unsplash

 

ブランド品。

 

 

 私のような小市民には、たまたま通りががったブランドのうっすいコートがなぜ20万円もし(しかもこの暑い夏に既に店頭に並んでいる)、さらにその下に一見何の変哲もない(ようにしか見えない)革靴が10万円するのか、さっぱりわからない。

 

それでも百貨店やショッピングモールには今でも新店舗がオープンしている。

 

 webで「ファッション・営業利益率」で調べてみると、シャネルは営業利益率28%、LVMHは19%、Kering(Guccin等)も19%と出てくるわ出てくるわ・・・・これ以外もいわゆるラグジュアリー系のブランドの営業利益率は軒並み高く、あまりに羨ましくて私はそっとリンク先を閉じた。

(参考:https://note.mu/fukaji/n/n9b48919a6e98

 

どうしてだろう?

こういうアパレルのブランドと我々素材業界の何が違うんだろうか?

 

 

BtoCとBtoB、最終製品と素材、ブランド認知度の有無・・

 

個別に考えていきたいが、色々複合的な要素が多そう。一方で、 昨年ある出会いから、「ファッションブランド」と「素材」の融合はすでに起こりつつあることは認識していた。

 

パリコレで喝采浴びた新素材 研究者のアピールが奏功

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO37381260V01C18A1000000/

 

 昨年この記事を見た時、「素材の可能性をうまく引き出したなあ」という感想だった。

 今、改めて振り返ってみると、この感想はあくまで素材産業を「主」と考え、デザイナーさんを「従」もしくは「手段」(失礼)と捉えていたきらいがある。

 

 ただ、顧客は「素材」を買いたいのではない。

 

●素材は"主役"ではなく"ツール"で考える

 つまり、顧客である最終消費者がお金を払ってでも手に入れたいのは、

素材メーカーが作りだした"材料"ではなく、

ファッションブランドが提供する”衣服”であり、"世界"であり、"ストーリー"なのだと。

 

 素材産業にいると、目の前のすんごい材料やテクノロジーを主役として考えてしまい、最終顧客へ提供する前に中継する役割として各種メーカーを考えていたのかもしれない(少なくとも私は)。

 

 素材産業の営業利益率を上げようとすると、他社に真似できない要素が必要になるため、材料で差別化!テクノロジーで差別化!と考えてしまいがち。その結果、素材だけで「世界」や「ストーリー」を作ろうとしてしまいそう(少なくとも私は)。

 

 しかし今では、この考えに少し無理があるように思えてきた。素材の「世界」、素材の「ストーリー」って何?具体的に何を構築すればいいのだろう。そして最終顧客はそれに共感し、お金を払うのだろうか。 

 

 顧客にとっては最終製品であるブランドが構築する世界やストーリーが魅力的であり、素材はそれを構成するのに欠かせない要素になればいいのではないか、つまり素材が主ではなくツールとして考える方が自然ではないか、と考えるに至った。

 

●で、日本の素材企業が利益率を上げるには?

 最初のお題:「日本」の素材企業の営業利益率を高めるには?まで考えなくてはいけない。具体的な策を考えようとしているタイミングで、いつもお世話になっているTメンターから以下のリンクを送っていただいた。

 

●外国人が欲しがる「日本の高級ブランド」5特徴

https://toyokeizai.net/articles/-/294830

 

最初は送られた意味が飲みこめず、スルーしてしまった(Tさんスイマセン)。この記事を深掘りしながら、もう少し考えてみたいと思う。今日はここまで・・

(暑くて集中力が持たない←言い訳)