で、日本はペットボトルをどうしたいのだろう?

久々のブログ更新。最近、以下2つのニュースが交互に目に入ってきて混乱している。

 

“海を殺す”マイクロプラスチック汚染、日本周辺は「ホットスポット」にも

https://www.huffingtonpost.jp/abematimes/micro-plastic_a_23462289/

 

ペットボトルコーヒー大ヒットの理由、サントリーが圧倒的優位

https://diamond.jp/articles/-/173745

 

「G7でプラスチックごみによる海洋汚染について協議され、合意文書が取りまとめられたが、日本は国内法の未整備などを理由にこれに署名をしなかった」と取り上げる一方で、「従来の缶コーヒーは中年男性が顧客の中心だが、スタイリッシュな印象のペットボトルによって、若年・女性層ニーズをつかんだことも、ブームになった要因だ」と分析する。ちなみにコーヒーの消費量は清涼飲料水の中で炭酸飲料、ミネラルウォーターに次ぐ3位であり、それらがどんどんペットボトルに置き換えられるとなると無視できる量ではない。

http://j-sda.or.jp/statistically-information/stati04.php

 

で、消費者はどっちに関心があるのだろう?海にプラスチックを流して汚染したくない?それともコーヒーをスタイリッシュにペットボトルで飲みたい?

 

 化学会社で働く身としては、消費者にとって便利なモノは作られるべきと思う一方で、ペットボトルをはじめとする化学製品の"ポイ捨て"が止まない/止むのに時間がかかるのであれば、積極的に代替策を提案すべきと考える。

 しかし、PET(ポリエチレンテレフタレート)の特長である「透明」「加工が容易」「リーズナブル」の代替樹脂は今のところ存在しない。だから今まで使われ続けてきている。

 

 となると次の手は「使いつつ廃棄物として問題にならないような手を打つ」フェーズを真剣に考える必要がある。例えば衣服に用いられるポリエステルは日本環境設計株式会社が色んなステークホルダーを巻き込みながら大規模にリサイクル事業を運営しており、ペット(ポリエチレンテレフタレート)においても、その分解プロセスにおいては一部明るい兆しも見えている。

 

ペットボトルを分解できる酵素が実験施設で偶然に生み出されたことが判明

https://gigazine.net/news/20180417-enzyme-eat-plastic-accidentally-created/

 

この酵素はまだまだ開発の余地があるだろう。私が仮に新規事業企画で陣頭指揮をとれるなら、この酵素開発を本気で行いたい。

 

■一度メリットを出してからデメリットを解決する

 いつの時代にも新しい製品やサービスにはメリットとデメリットが存在する。

 

 自動車が発明され、人の移動が劇的に便利になったと同時に発生した排気ガスや交通事故の問題に対して、自動車メーカーが燃料電池車や排気フィルター、あるいは自動運転に必死に取り組んでいるように、

 化学メーカーの屋台骨の一つであるプラスチックの廃棄問題に対し、必死に取り組む化学メーカーが一つでも多く存在してほしいと思うし、自分がその当事者になりたいと思う。

 サステナビリティやSDGsという後追いもある。持続可能を求めるマクロトレンドと、分解酵素という技術の進歩が合致しつつある今が絶好のチャンスのはず。後はマネタイズ方法を考えないと(次回までの宿題)。

 

SDGsを化学のテクノロジーで実現したい―①イントロ

 ひょんなきっかけから大学の学部を「化学」に選んで以降、気付けば15年が経ちました。

 あのころはそこまで化学に強い想いはなく、唯一興味のあった医薬品を創る手段としての有機合成からスタートしましたが、最近特に「化学」の意義を意識する機会が増えました。

 

 きわめて個人的な意見ですが、私個人としては

これがあるとさらに便利になるね」というモノ・サービスより、

これがないと(文字通り)死んでしまうかもしれない」というモノ・サービスを創りたいという想いが強いです。おそらく人より強すぎます。

 

 例えばスマートフォンには非常に多くの化学素材が使われており、皆さんが持てば持つほど、2年に一度買い替えれば買い替えるほど、売り上げが上がるデバイスです。

(余談:数多ある"モノ"のうち「10万円前後の価格」で「2年に1度の高頻度で当たり前のように消費者が買い替える」ハードは長い歴史上スマホしかない、という話を聞きました)

 

 ただし、仮にiPhone7をiPhoneXに変更しなくても、その人の人生が終わるわけではないし、Galaxy8が今後開発を中止したとしても、体調を壊して入院するわけではない(する人もいるかもしれませんがw)。

 

 そのような材料の開発や供給に対して、私は人生を賭けることができません。もちろん、そのような対象でも全力で開発に邁進しますし、会社の売上向上に貢献したい気持ちは強く持っていますが、「自分の人生を賭けてまで」とは思いません。それよりも、

 

 このろ過膜がないときれいな水が飲めなくなり、子供が体調を崩してしまう

とか

 このDPF(ディーゼルパーティキュレイトフィルター)がないと、車の排気ガスで体調を崩す人が増大する

とか

 この燃料電池によって、車の排気ガスがなくなり環境が改善する

 

の方が、やりがいを強く感じます。

 これは2011年にビジネススクールに入学した際に自分の取り組みたいことを1分で話す機会があり、そのときにうんうんと考えた時に、しっくり来た自分の判断軸でした。

 

SDGs(Sustainable Development Goal)

 上記のような思いが日に日に増してきていた2015年、国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html

 

 これは2001年に類似の枠組みで設定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の後継で、MDGsにいくつかの目標を加え、合計17の目標が設定されています。

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(出典:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000270935.pdf

 

 ここには様々な目標がある中、化学が多いに貢献できるゴールもいくつかあるなと思った時、「これがないと(文字通り)死んでしまうかもしれない」という考え方とがちっとはまる感覚がありました。

 

 そう思っていたら、2018年の年頭挨拶で日本最大の化学メーカーである三菱ケミカルホールディングス 小林会長がこんなことをおっしゃっておられました。

 

2018010512kobayashi.jpg

以下引用

「★本当に化学が必要な時代
 社会に貢献するという意味で、化学は極めて重要な産業です。国連のSDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールをみても、化学にしかできないことが非常に多いですよね。空気や水を純化して綺麗にするシステムだとか、自動車の軽量化により温室効果ガスの削減につながる複合材料だとか、有機太陽電池で衣服を作るとか。CO2をカーボン源にして素材を生み出すのも、根源的には化学しかできません。素材はモノの世界で、それは分子の世界です。社会貢献のために化学にしかできないことばかりが残ってきたのです。分子レベルで設計するということでは、DNAも再生医療もそうです。生物学は分子そのものです。学問と産業がほとんど近いところに来る。そこでなければ日本は勝てない。この認識を皆が持つべきだと思います。」

http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2018/01/05-32264.html

 

 私が言うのもおこがましいですが、この内容に完全に同意です。じゃあSDGsが具体的に何で、それに対して化学は具体的にどんなことができるのか?について、自分の頭の整理も兼ねてこの後一つずつピックアップしていこうと思います。

化学産業がシリコンバレーに行く意義-仮説③顧客の動きを察知する

 私は昨年、3月と11月にSVを訪れました。3月は県のネットワーキングプログラムとして30名程度の団体として訪問し、初日にさっそく定番のPlug and Playへ。

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(定番の入り口にある入居者リスト)

 Paypalなどの有名企業と聞いたことのない企業が数多ある中、私の頭の中は「ここにもしうちが入居したらケミカル産業として最初じゃない?」と、入居する意義や目的そっちのけで妄想してました(一番やっちゃいけない考え方)。

 

 そう思いながら「ケミカル、ケミカル・・・」とつぶやきながら探していると・・・・

 

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 DNP(Dai Nippon Printing)

 

 やっぱり一番乗りはないかw そもそもDNPさんはケミカルという領域より、ここではおそらく新しいメディア関係の事業を目的として入居されているのではないだろうかと推察。

 

さらに、ドイツの化学会社「Henkel」も

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(やっぱり化学産業はないなあーーーあ、ヘンケルや!と虚を突かれて手ブレwww)

 

 こういう事をしている時点で、考えが浅いことがよく判ります。 

 

で、何のために入居するの?

 PnP初訪問時は、とにかくここが老舗のインキュベーションオフィスとして「何かすごい場所なんだろう」と思って訪問しました(これもダメなパターン)。

 入居している方の説明では、ここにいるベンチャーはAR、VR、ドローン等のハード系であれ、Fintech等のソフトウェア系であれ、とにかく流行りのベンチャーが多く、日本の企業はその情報をとるために入居している企業も少なくないと聞きました。

 

 そのエリアに「化学企業」が入ってどんな意味があるのか?

 私は(かなり無理矢理)「AR,VR,ドローンも各材料が必要になるから、その動向を把握しそれらのデバイスの実現に向けた素材を提供するんだ!」と考えました。といいながら自分でも全くしっくりきておらず、かといって「ここに化学産業が入ることは無意味だ」とも断言できず、もやもやして帰国しました。

 

「PnPはたいしたことはないよ。ただし・・・」

 そして11月のSV再訪。ある方に「前回PnPに行って、ここに当社が入れば新しい動きができるのでは?と一瞬考えたんですが、その意義や目的がかなり弱いんですよね・・・」と話すと、

 

「PnPが特にスゴイという認識はないし、確かに化学産業が入っても直接的な事業には繋がりにくそう。ただし、

 

我々の顧客がどういうイベントに数多く顔を出している、とか

我々の顧客がどういう情報を欲しがっているとか、

 

そういった顧客の最新の動向は、PnPのようなインキュベーションオフィスや関連イベントに顔を出していると見えてくることがあるので、

"顧客の動きを察知する"という意味だと、ああいうインキュベーションオフィスは使えるかもね」 とコメントを頂きました。

 

 確かに化学産業の顧客である自動車産業や家電メーカーが、今後どう動こうと試行錯誤していて、どういう情報を得たいと思っているかを察知することができれば、それに対して

 

攻めの姿勢:仮に「自動車産業の電気自動車への傾倒が本格的になった」と察知すれば、「電気自動車を構成する素材(EV用電池や高耐熱性樹脂とか・・・)の開発・提供に今以上に本気でシフトさせる」とか

 

守りの姿勢:仮に「顧客自身が材料開発に乗り出そうとしている」と察知すれば、「化学産業が所有しているビッグデータとアルゴリズムを駆使し、材料開発を効率化させる」などの

 

 アクションに対する確度が上がるのでは?と感じました。

 とにかく、何でもかんでも直接的に「自社の動きにつなげられないか?」と考えるだけでなく、「顧客の動きを察知する」という間接的なアクションも意義があるという、私にとっては少し肩の力が抜けた新しい気付きがありました。

化学産業がシリコンバレーに行く意義-仮説②「モノからサービス」を具体的に考える

 昨年11月中旬に1週間シリコンバレーを訪れました。

 色んな目的があったのですが、その一つに、現地で当たり前になりつつある車のシェアリングサービスに化学産業を掛け合わせた事業案を考えるということ。

 

 先の投稿(http://beyondthechemistry.hatenablog.com/entry/2018/01/06/002555)のように、モノをシェアする時代がやってくると、そのモノは売れなくなります。モノが売れなくなると、モノを構成する要素も同様に売れなくなる。

 

 例えば車が売れなくなると、タイヤやガラス、ボディーも売れなくなる。正確に言うと売れる数が減る。人口減少もなく、所得低下もなく、外部要因が全く変わっていないのに売り上げだけが単純に減るという「ちょっと待てよ!」というシーンが来る可能性があります。

 

だから「モノからサービスへ」って?

 このような局面を迎えるにあたり、製造業では"「モノ」から「サービス」へ""「モノ」売りから「コト」売りへ”というフレーズをよく耳にするようになりました。私がその時よく理解できていなかったのは、「じゃあ今までモノばかり売り切りだった企業が具体的にどう転換するのか?」という点です。

 

 今回、それを考えるヒントをもらえたのが、現地で何回も使ったUber、ではなく競合のLyftで出会ったドライバーとの会話でした。

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(写真:空港から最初に乗ったLyft。ガラス右側に四角いステッカー(Lyft)と丸いステッカー(Uber)。彼はLyftドライバーでありUberドライバーでもある)

 

 いかつい運転手は黙々と運転する。ちょいちょい話しかけていると、途中でこんなやりとりがありました。

 

私:Lyftだとあちこち運転すると思うけど、どの辺に住んでるの?

Lyftドライバー(ド):ここから20分くらいのところ。行動範囲も大体この辺が多いで。あ、でもカーステーションに行かないといけないのが面倒やわ。

 

私:カーステーション?

ド:おう。実はこの車、俺のじゃないんだ。だからカーステーションに行かなあかんねん。

私:へ?借りてるってこと?誰から?

 

 

ド:Lyftから。

 

私:へーLyftはそこまで準備してでもドライバーを増やしたいんやね。で、カーステーションって何よ?

(私の心の中:よし、ここで私の仮説「一日中走り回っても壊れない耐久性のある車」があったら嬉しい?って聞こう。絶対欲しいって言うはずだ!)

 

ド:Lyftは市(city)に一つずつサービスステーションがあって、半年に一回行かなあかんねん

 

私:半年?車検みたいなもん??

 

ド:車検って知らんけどww とにかく半年に一回。結構チェック待ちの車で混んでてチェックされるのに時間がかかる。

 

私:チェックして問題なければ?

ド:それで終わり。また走り出すだけ。故障しかけていたらパーツとか替えることもあるし。

 

私:(ハッ!)じゃあそのカーステーションに、

「予め交換必要なパーツが判ってて用意されていて、到着後簡単なチェックの後にすぐパーツを替えて終わり」ってなったら嬉しい?

 

ド:そりゃ嬉しいんちゃうか。チェックする人員も減るだろうし。

 

大量生産からオンデマンド生産

 これまでのような巨大工場で各パーツを大量生産し、在庫を持ちながら適宜各地域の拠点に運搬する方法でもよいですが、一義的になり、振れ幅のあるニーズに対応するのは逆に非効率になりそう。適材適所にオンデマンドでパーツさえあればいい、という必要条件であれば、3Dプリンターで作る方が優位です。

 

 各拠点に3Dプリンターを置き、車の部品の劣化度合いや定期交換時期は予めセンシングしておく。車がサービスステーションに入ってIDを認証するだけで、交換部位の有無なども瞬時に判断できて効率化に繋がります。

 そして車の故障頻度や回数は都度変動するので、車が到着する時間が判ればパーツを現地で生産して待機しておくオンデマンドサービスに繋がるのではと思いました。そうなると化学企業も自社のパーツを3Dプリンタ―で生産しつつ、その他の製品も取り揃えておく、シェアリングを支えるプラットフォーム事業に進出できるのでは、と。

 

軍隊でも3Dプリンター?

 このぼんやりとした考えがフラッシュバックしたのはそれから3日後、IDTechEx Showというカンファレンスに参加した時でした。

 錚々たるテック企業が最先端のテクノロジーやデバイス、ビジネスを発表する中、登場したのは泣く子も黙るUS army。

 

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 表紙からも、登壇者からも、漢のにおいしかしないw

 

 ですが内容は至って全うで、一言でいうと

「陸軍にとって3Dプリンターの活用が極めて大事」というお話。キーワードは「readiness」(=準備万端)でした。

 

 軍隊は武器等を持ちながら各所を移動しないといけないし、戦闘が長引くと武器が不足してくる。その時、に各滞留拠点で武器を作ろう、というロジカルなような怖いようなコンセプト。

 

 実際にグレネード弾を3Dプリンターで作ったらパフォーマンス?が30%増したぜ、との報告もありました。軽量であり必要になってから作ればOKなのでいいことずくめだそう。

 事前にアブストラクトを見た時は「まあ一般論を語るんだろうな。陸軍だからあまり秘密な話はできないだろうし」と思っていたので、グレネードのくだりから驚きの連続でした。軍隊の中にある10個前後の組織が協力してさらなる開発にいどんでいるとのことでした。

 

まとめ

 今回、シェアリングサービスや軍隊(!)においても、その場でオンデマンドでモノを作る、というシーンに価値があるということが判りました。全てそうなるわけではないですが、顧客とその使うシーンを具体的にイメージできれば、これまでの大量製造ありきの製造の役割の一部置き換える可能性が十分にある、ということを実感しました。

 

 また、各パーツを製造する化学産業であっても、そのようなオンデマンドサービスに自ら参入し、自社のパーツを含めて提供することを「サービスを提供する」、と言えて、化学産業におけるサービス化やコト売り、と捉えると少し具体性が増したかな、と感じた経験でした。

化学産業がシリコンバレーに行く意義-仮説①顧客接点の変化への対応

 昨年3月末に公開されたシリコンバレーD-lab.レポートに感銘を受けてから半年以上たった11月中旬、私は現地でレポート作成者のお一人とお会いできることになりました。

 まだ一度もお会いしていない4月頃に、facebookメッセンジャーでいきなり暑苦しいメッセージを送って面会のお願いをし、それに快く受けていただいたことに、今思えば感謝感謝です。

 

 最初は先方のオフィスにお邪魔する予定でしたが、

 訪問の1週間前に連絡があり、急きょ海外出張が入りお会いできないとのご一報が。

 

 「うわーまじかー!これは痛恨・・・」と思っていたところ、

 

 先方の出発日・出発空港 と 

 私の 到着日・到着空港 が 偶然一致していたことが判明

 

その結果、サンフランシスコ空港のカフェでお会いできることになりました。

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私が先に到着し、予め準備していた聞きたいことリストを見直す。

 

「聞きたいことは4つ。まず自己紹介して、聞きたいことを質問して・・・時間は1時間半だから1つ20分以内。あ、始動プログラムのメンタリングもしていただきたいんだった・・時間がない・・」

 

と考え事していると、コーヒーを頼んでいないことを思い出し列に並ぶ。

現地の人と初めての会話。

 

「カッフィープリーズ」「ハア?」

「いや、だからコッフィーだって」「ン?」

 

わたしはどの国行っても、コーヒーを一発で伝えられたことがありませんorz

 

その後なんとかブレンドコーヒーをゲットして、到着を待つ。

 

「あ、こんなことも聞きたいな」

「あの取材記事をもう一度見直そう」

と考え30分ほどすると「こんにちは!」と声と共にさわやかな日本人登場。

 

 

「わー初めまして!」と握手を交わす。想像していた通りとても気さくな人。

「コーヒー買ってきますね」「あ、はい」

(どう発音しているか聞きたいw)

 

 

その後、お互い席に座って自己紹介もそこそこに、

私が化学業界にいること

シリコンバレーD-lab.に興奮したこと

このレポートを公開頂いたお礼

 

をまくしたてる。

 

その後は、私が勝手に妄想している「化学産業がSVに拠点を置く目的や価値を産む方法」についていくつかアドバイスを頂きました。

この投稿ではその一つの「デジタル化時代の顧客接点」を振り返ります。

 

■顧客との接点の変化

これまでの製造業の流れは

素材(化学産業)→ハードウェア(自動車、電機)→ユーザー(消費者)

 

でした。これをアナログ時代、と名付けるなら、

これから来る(もしくは既に来ている)デジタル時代は

 

素材 → ハードウェア → アプリケーション・サービス → ユーザー となる。

 

つまり、ユーザーとの接点を持っている企業/産業が

これまでのハードウェア(車ならトヨタ、ホンダ等)から、サービスを提供する会社(車ならUber,Lyft)に変わってきているのではないか、という解釈です。

 

■顧客接点の変化が起こった理由

この変化が起こっている理由が、

①スマートフォンがものすごいスピードで消費者へ浸透したこと と 

②モノを持つことを良しとしないミレニアル世代が一定割合を占めだした 

 

ためである、とのお話しを伺いました。

 

 そうなると、今後消費者が何を考え何を求めているか、を一番近くで精度高く考えられるのはサービス提供会社ではないか。同じ車向けの部材を開発す化学産業も、ハードウェアメーカーだけではなく、UberやLiftのようなサービス(プラットフォーム)会社とコンタクトを取らないといけないのではないか。

 そのためには化学産業が彼らの拠点があるシリコンバレーに拠点を置いて、継続的な接点を持つ必要があるのでは?という話でした。

  化学企業がUberとディスカッションをするというのは現在ではイメージがつきにくいですが、彼らが欲しがる車を創るための材料を開発する、というのは3年経つと当たり前の常識になるかもしれません。

 このように、時代が変わると消費者に近い産業が変わり得るということを、川上産業である我々も意識せねばならないという気づきを得ました。

 

■考察

 さらに一歩先を予測するなら、アメリカよりも人口が多くて土地も広く、怪しい白タクも多いであろう(←偏見ですw)中国とインドの方が要注目かもしれません。

 

 そうなると、中国の滴滴出行やインドのOla Cabsと化学産業がコラボレーションして新しい材料を開発する、というニュースがいずれ出てくるかもしれません。これは個人的にワクワクします。

インドの埃にも耐えられる塗料、とか

PM2.5を吸収して無害化するバンパー、とか

 

しかしこれもいずれも「材料」の範疇です。

"beyond the chemistry"という観点で新しいビジネスプランは?というのを次回に。

【追悼】星野仙一 覚悟と愛情

神戸生まれ関西育ちなのに、私は物心ついたときからなぜか中日ファンでした。

 

父親は昔気質の巨人ファン

母親が典型的な阪神ファン

そしてひとり息子の私が中日ファン

 

この3チームでAクラスを争った幸せな時期もありましたが、私の記憶の中にある中日の黄金時代は

「4番 落合博満、エース 今中慎二、監督 星野仙一」

 

  星野監督と言えば私が思い出すのはこのシーン。

 小学生高学年だったある日の夜、家族で晩ご飯を食べながら中日-巨人戦(息子vs父親)を観ていました。

  巨人の槙原(懐かしい・・・)の危険な投球をきっかけに乱闘が始まります。ホームベース付近で監督と審判で小競り合いをしている時に、巨人軍ベンチからヤジが飛びました(視聴者には聞こえない音量で)

 

それに対し、星野監督はくるっと巨人ベンチ方向に向きを変え

 「何や!何やこの野郎!来い!」と迫っていきます。

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(出典)https://www.nikkansports.com/baseball/news/201801060000150.html

 

ご飯を食べていた私は持っていた箸が止まり、しばし見入ったのを覚えています。

 

「なんだこの監督、マジやん・・」と。なんでこんなに熱くなれるんだろう?

選手より先に戦場に向かってるやん、と。

 

また見たくなりました。

https://www.youtube.com/watch?v=a8N51IHQ3Qk

(50秒あたりからスイッチオンします)

 

それから中日の試合を観るのがどんどん楽しくなりました。

試合に勝っても負けても、楽しかったのを覚えています。

 

 

 

 

追悼番組の中で、病状が悪化する前に収録されたラジオでの星野監督の音声を聞きました。

 

「監督の資質として必要な条件は?」との問いに、

  

 

 

「いろいろあるけど・・・やっぱり覚悟ですね」と。

 

続けて、

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ぶん殴りにくくなった時代ですが、

まず選手に対する愛情がないと指導は務まらない。

 

あまりある愛情を持った上で、プロ選手として厳しく接する覚悟が必要なのだと教えてもらったような気持ちになりました。それにしてもいいお顔です。

 

 

いやあ、惜しい。あまりにも惜しい。

 

 

燃える男

 

闘将

 

男が惚れる男

 

 

残念です。ありがとうございました。

 

ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

「勝つために何ができるか?」という執念

 土日のブログは化学を離れ、私が最近感じたことをつらつらと書いていきます。

 昨年12月からお正月までの間で私は3回「最終決戦」の場に触れる機会がありました。

 

①M1決勝(12/3)

②始動 最終報告会(12/16) 

③箱根駅伝(1/2,3)

 

 これらを観たり参加した私は、そこで勝負をかけてきた人・チームの姿勢に対し、畏怖の念を覚えました。それが「勝つために何ができるか?」という執念

 

M1決勝

 優勝したとろサーモンは好きで嬉しい結果だったですが、それ以上に感動したのは、皆さんも感じられたかもしれませんが、ジャルジャルの福徳。

 背筋ピーンのネタは、好き嫌いが出るだろうし(実際に決勝には進まなかったが、松ちゃんは"僕は一番おもしろかったんですけど"と言っていた)、一つ噛んだらリズムが狂って面白くなくなるリスクがあった。それを本番で選び、決勝に行けなかった時に泣きそうになっていた彼はきっと勝つために何ができるか?」という執念があったのではと感じました。でないとあの涙は出ないと思う。

https://sirabee.com/2017/12/04/20161399134/

 

始動 最終報告会

 始動について補足すると、2017年で3年目を迎えた、経産省が後援しているイノベータを育成するプログラムです。

http://sido2017.com/


 大企業や官庁、ベンチャー経営者等のメンバーが個々の事業企画案を持って集まり、その内容をブラッシュアップするというもので、2017年7月から12月まで行われていました。

 全部で126名が参加し、最終的に20名が選抜されてシリコンバレーに行き、現地でさらに事業企画をブラッシュアップするというもので、その選抜のための最終報告会が昨年12/16に行われました。

 報告会でのピッチ時間は4分。審査員は3名で全員初対面。6つの部屋に約20名ずつ別れて同時進行でピッチ開始。

 ちなみにM1と違って最初から発表順番は決まっていますw 私は確か13番目。

 

 私のプランはある程度形がまとまっていたので、そのまとまりを壊さずにより魅力的な企画案になるよう、ピッチのスライドを少しずつ修正して本番を迎えました。

 結果、今まで一番うまく話せて自分の力は出し切りました。「恙なく」終わった、という感じ。脱力しながら後のメンバーのピッチを聞いていると、最後のメンバーが、今までと全く違うテンションで、審査員や同室のメンバーの眼を見て語りかけました

 

「審査員の皆さん、突然ですが今背筋曲がっていませんか?私が解決したい課題は〇〇で・・・」

 

「うわ、こいつ勝負に出たな」と直感的に感じました。さらに、ピッチ半分くらい経過した時に、

 

 「皆さん、こうしている間にまた背筋が曲がっていませんか?このように、背筋を維持するのはとても難しくて・・・」

  という語り口調で、終始自分の土俵に引きずり込んだピッチでした。

 

 「初対面の審査員に4分で事業計画を全て説明するなんて不可能だ。じゃあ、勝つためにどうする?そもそもここで勝つとはどういうこと?選抜してもらうことが目標だ。そのためには審査員の残像に焼き付くくらい強烈な印象を与えないと・・・じゃあ・・・」

 

 と彼が思ったかどうかは判りませんが、最後のピッチであのスタンスで挑んだ彼に、私は「勝つために何ができるか?」という執念を感じました。正直、そういう姿勢ができる彼を心から羨ましく思い、「恙なく」終えた自分を恥じました。

 

ただ、二人とも選抜メンバーには選ばれなかったのですがorz

 

③箱根駅伝

 年末に①,②を経験したため、なんかそういう事象がないかと探しに行った感は否めないのですが、例年通り箱根駅伝を観ていて私が驚いたのが、往路優勝した東洋大学のメンバーラインナップ。それがこちら。


1区 西山 和弥 1年  区間1位
2区 相澤 晃    2年  区間3位
3区 山本 修二 3年 区間1位
4区 𠮷川 洋次 1年 区間2位
5区 田中 龍誠 1年 区間9位 往路1位

 

 私が驚いたのは、学年 でした。

 1年生が3人もいて、4年生が一人もいない。東洋大の酒井監督は「同じ力なら下級生を使う」というポリシーであったとはいえ、何が起こるかわからない箱根駅伝で高校生卒業したばかりの1年生をしかも往路で配置するというのは驚きです(層の厚い青山学院大学は半分以上が4年生)。そしてその期待に見事応えたメンバーが往路優勝を実現。

 ここでも監督が、ライバル青学に「勝つために何ができるか?」という執念を燃やして戦ったのでは、と勝手に解釈しました。

 http://www.hochi.co.jp/sports/feature/hakone/20180103-OHT1T50062.html

 

まとめ

彼らはいずれも

「今のままでは勝てないよね」

「そもそも〇〇は強すぎるよね」

「このままいくと3位くらいじゃない?」

 

ではなく、

 

今の戦力で「勝つために何ができるか?」を考え続け、そのアイデアをもって本番の最終決戦に挑むという、粘り強さと執念を感じました。

 

 このことは何もピッチ大会やスポーツの試合だけでなく、普段の仕事でもどの業界であれ競合が存在すれば

「今のままではコンペに勝てないよね」

「そもそも(シェア1位の競合)は強すぎるよね」

「このままいくと少しくらい受注がとれるんじゃない?」

 

 と心で思ってしまうシーンは社会人ではあり得るのではと思います。

 そこで諦めずに「勝つために何ができるか?」を考え抜いて、一泡吹かせてやろうという、ジャイアントキリングのような挑戦をできる個人やチームになろうと強く感じた年末年始でした。

 

 

てか、本ネタの化学の話より長いしw